You've got mail #13
「坊っちゃん」からの手紙
2014年8月22日(金) 開演 午後7時
2014年8月23日(土) 開演 午後1時/午後6時
北区滝野川 会館・大ホール

<演奏曲目>
第一幕
・ スタンド アローン
・ 維新マーチ
・ ウミ
・ 荒城の月
・ 箱根八里
・ 花
・ 夏の思い出
・ 月見草
・ お父さんはね
・ ミュージカルメドレー
第二幕
・ この星のどこかで
・ 我は海の子
・ 仰げば尊し
・ スタンド アローン
・ 明日があるさ
・ オレたちはサルじゃない!
<演出・脚本 福原正美>
音楽と芝居。
このふたつをひとつの世界に引き込んで、物語を創ってみる作業が、この「ユーガットメール」の舞台です。
芝居だけでしたら「何々劇団」とか「なんとか座」の演劇と比べられたら、お世辞にも「上手だ」とはいえないと思います。芝居限定の舞台づくりではなくて、音楽性も求められた舞台なので、出演者は自ずと制限されてしまうのです。
芝居が出来ればいい、というわけにはいきませんし、歌えればいい、というわけにもいきません。
芝居も音楽も両方ともにこなせる役者さんでないと、「ユーガット」の舞台には乗れないようなのです…。
歌は上手なのですが、
「台詞があるんですか? ない方がいいんですけど…」
と、おっしゃった演者がいましたが、そういう人はこの舞台には乗れませんでした。
今回ほど、台本の完成を引き延ばしたことはありませんでした。
今までとは違って大変な苦戦をして、書き上げました。というのは、実は正岡子規について学生時代、あえて避けていたからなのです。学生時代はやはり、恋だ愛だ、浪漫だという内面的文学ほうが「おしゃれ」であり、「かっこいい」し、知的な感じがして、上品に見えました。
現実をそのまま映し出す、「写生」「写実」の文人は上品さを感じなくて、しかも、ひどい病状でありながら筆を執り続けた…正岡子規という文人は青春時代のボクにとっては、別世界の人に感じていたからです。でも、まさかと思う「大病」を自分がしてみると、子規が俄然身近に感じてしまう…不思議なほどに。逆に、愛だ恋だのお話には、まったく興味が消えてしまったから、これまた不思議です。
生きること。それ自体がすばらしい…と、思えるのです。
子規が登場すれば、否応なしにその妹・律に関心が向きますね。
このお芝居でも、誰を「律役」にしようかと、さんざん迷いました。でも、「待てよ!」と。
この舞台は、「音楽劇」だということ。
子規を描き、律とのことも書き続ければ、秋山真之とのことも、夏目漱石との友情も描く必要が出てくるし…とてもじゃないが、2,3時間の舞台で演じることは出来ない…。
…などなど、とにかく、台本のことを考えるとどんどん面倒な世界ばかりをみてしまうのです。
そんなことから、今回は台本を仕上げるのに、ずいぶん「遠回り」をしたものです。
途中から、美波さんにも手伝ってもらって、なんとか台本にしてみました。
「坊っちゃん」
そう、子規から漱石に視点を移動したら、あっという間に台本は完成です。
明治時代、日本はふたつの大国と大きな戦いをして、まかり間違えば列強国の植民地になっていたかもしれないという時代でもあります。ロシア帝国の「バルチック艦隊」を全滅させるという奇跡的勝利をしていた頃、文学界は「吾輩は猫である」、その翌年には「坊っちゃん」の出版と実に楽天的でもありました。
そういう意味で、この時代は「夢」と「希望」が行動の源泉だったことを改めて感じます。現在、彼らの遺産は生きているのでしょうか…。
今の時代に「坊っちゃん」の世界を見直してみるのは、けっして無駄な作業とはいえないと思うのです。